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日本は雷が多い国です。
自分の家に落雷することは稀でしょう。でも、直接自宅に落ちなくても、間接的に被害を受けることがあります。
雷のエネルギーは非常に大きいので、落雷したポイントだけではなく、その周囲の家にも被害が及びます。二次被害の原因は「サージ電流」です。
サージ電流の被害を防ぐ
雷サージ電流について説明します。
雷サージ電流
雷サージ電流とは
雷が落ちると、雷の直撃を受けた家には大きな電流が流れます。それと同時に、少し離れたところにある電線や電話線にも、高圧の電流(雷サージ電流)が発生します。
離れた電線に電気が発生する理由は「電磁誘導」です。

カードリーダーにカードを近づけるだけでゲートが開く理由は、カードリーダーが発する磁気によってカード内のチップに微弱な電気が流れ、その電気を使ってカードリーダーと交信するからです。
このように離れた場所に電気を起こすことができるのが「電磁誘導」です。
落雷があると「電磁誘導」が巨大な規模でおこなわれ、付近の電線や電話線にサージ電流が発生します。その電圧は数千ボルトから数万ボルトに達します。
この高圧電流が電線を伝って家に入り込み、家屋内の家電製品を破壊します。パソコンやモデムなどのOA機器のほか、テレビ、冷蔵庫、エアコンなどすべての家電製品が故障して使えなくなる可能性があります。
スマホやノートパソコンなどのモバイル機器も、たまたま充電中でコンセントに繋がっていれば、やはり被害を受けます。
雷サージ電流の被害はどうすれば防げるか
もっとも確実な被害防止策は、雷が鳴り始めたら、すべての電気製品のコンセントを抜くことです。物理的に完全に遮断するわけです。
スイッチをオフにしただけでは不十分です。雷サージ電流は高圧なので、スイッチを飛び越えて電気機器の内部に入り、電子部品を破壊します。
でも、IP電話用のモデムや冷蔵庫は、コンセントを抜くわけにいきませんし、また、外出中の急な雷には、そもそも対応不可能です。
そこで、雷サージ対策用の電源タップが必要になるわけです。
雷サージ対策タップの構造・仕組み
雷サージ対策用タップを分解してみました。
コンセントの金属端子から、2本の黒いコードが基板につながっています。この基板に乗っている部品が、雷サージ吸収素子(バリスタ)です。
雷サージ吸収素子(バリスタ)は、普段は電気を通しませんが、数千から数万ボルトの高圧の雷サージ電流が来たときだけ電気抵抗が低くなり、電気を通します。これにより、高圧電流が電気製品側に流れなくなります。
雷サージ対応タップの性能
ただし、サージ吸収素子は、性能の限界を超える高電圧が流れると壊れます。限界が高いものほど安全性が高いわけですが、耐圧性能が高いものは、値段も高いです。
社団法人電子情報技術産業協会「バリスタの安全な使い方」
一部のメーカーを除き、雷サージ対応タップの製品パッケージには、最大サージ電圧が明記してあります。雷サージ機能付タップを購入するときは、この数字を確認してください。
サージ対策用品の性能比較
市販のサージ電流対策タップの性能比較をします。
サージ電流対策用品の性能は、最大サージ電圧の大きさで決まります。ネットで購入できる代表的な製品の一覧表を作成しました。
メーカー | 型番 | 対応電圧 | 仕様 |
---|---|---|---|
オーム電機 | HS-A1234W | 60000V | 1口 |
サンワサプライ | TAP-SP207 | 2500V | 3口 |
エレコム | KT-180 | 12500V | 2口 |
バッファロー | BSTAPD01WH | 非開示※ | 3口 |
ヤザワ | HTK153BK | 13000V | 3口 |
ヤザワ | STB60WH | 60000V | ★ |
この表で見ると、上限が2500Vのサンワサプライの製品は、あきらかに性能不足です。現実のサージ電流は、数千ボルトから数万ボルトに達します。いまどき、100均(ダイソー)のタップでさえ4500V対応です。
少なくとも1万ボルト以上に対応できるものを選んだほうがよいと思います。
また、バッファローの製品も避けた方がよいでしょう。バッファロー公式HPの製品情報には「雷サージガード付」と書いてあるだけで、最大サージ電圧の記載がありません。同社のサポートに問い合わせたところ、最大サージ電圧は「非開示情報」であるとの回答をいただきました。
基本スペックである最大サージ電流が「非公開」というのには驚きました。他社はみな製品パッケージに明記してあります(ダイソーでさえ明記してあります)。基本スペックが不明では検討のしようがないので、バッファローは選択肢から外しました。
ユニークな製品もあります
上の表で仕様欄に★マークがついているヤザワの製品は、少し特殊な製品です。このプラグを普通のテーブルタップに差し込むと、そのテーブルタップが雷サージ対応のタップに変わるというユニークなものです。
差し込まれたこの製品を通って雷サージ電流がバイパスされるので、その他の差込口には高圧電流が流れない仕組みです。テーブルタップの差込口をひとつ潰してしまうことになりますが、対応電圧が60000Vと高性能なので、魅力的な製品です。
実際に買ってみました
実際に、いくつか買ってみました。
オーム電機(HS-A1234W)
市販品のなかでは最高レベルの60000V対応の雷ガードタップです。赤いLEDは雷サージ機能が作動中であることを示します。
ただし、差し込み口が1つしかないので、わたしはそこに普通の3個口の電源タップを差して、複数の機器をつないでいます。
購入した3つのタップのうちで最も対応電圧が高いので、わたしの部屋にある電気製品のなかで比較的値段が高いパソコン、液晶ディスプレイ、LANのルーター、Faxを、このタップにつないでいます。
合計1500Wまで使えるタップなので、PC等の電子機器なら複数つないでも大丈夫だと思います。
Yazawa(HTK153BK)
対応電圧が13000Vの雷ガード付きトリプルタップです。オーム電機の60000Vよりもかなり性能は落ちますが、市販品のなかではミドルレベルの性能の製品です。作動中を示すLEDは緑色です。
差し込み口が3口あるので、同時に3つの家電製品のコンセントを差せます。普通の3個口電源タップとほぼ同じサイズなので、使いやすいです。
性能が中級レベルであることを考慮して、この電源タップには、扇風機とコードレスフォンなどの比較的安価な電気製品をつないでいます。
エレコム(KT-180)
12500V対応の製品です。Yazawaの製品と同じく、ミドルレベルの性能の製品です。
左右両側に差込口があり、2個のプラグをつなぐことができます。作動状況を示すLEDがないので、わたしは気分的に物足りないのですが、部屋に余分な光がないほうが落ち着くという方は、これを選ぶのがよいかも知れません。
ただし、最高サージ電圧が12500Vしかないので、PCなどの高価な電子製品で使うには不安があります。
このタップは机の上に設置して、小型のデスクファンと、スマートフォンの充電器をつないでいます。小型のデスクファンは壊れても諦められる程度の値段ですし、スマホの充電器は自分の外出中は使用しませんから、スマホが雷サージ電流の被害を受ける可能性はありません。
ダイソー(100均)製はやめたほうがよい
雷サージ機能付きの電源タップは、100円均一のダイソーにも売っています。1口タイプ(100円)と3口タイプ(200円)の2種類を買ってみました。
どちらも耐用電圧は4500Vなので、高性能ではありません。雷サージの電圧は数千ボルトから数万ボルトですから、ごく軽い雷サージのみに有効な製品です。
外観を見た感じは、一般の電機メーカーのものと変わりません。しかし、中を開けてみて驚きました。内部の配線コードが、端子とプラスチックの間に挟まって、つぶれています(赤矢印の箇所)。
コードの状態を観察するために、挟まっている箇所を引き出してみると、表面のビニールの被覆が損傷していました。
もし、ここの被覆が破れると、100Vの両極がショートします。
とても雑な組み立て方をしているようです。これでは、長く使っている間に断線や、最悪ショートして発火しかねません。恐ろしくて、コンセントに差し込めません。
電気関係のアイテムは、事故防止のためにも信頼性が大切です。ダイソーやセリアなどの100均ではなく、有名電気メーカーの製品を使ったほうが安全です。
おすすめの電源タップ
わたしが買った製品のなかで、おすすめの一品は、オーム電機の60000V対応の電源タップです。
60000V対応というスペックは、安心感があります。コンセントの差し込みが一つしかない点は、普通の3口のタップと併用すれば解決できます。
合計1500ワットまでなら複数の電気製品をつないでも大丈夫です。
この種の製品は、近所に雷が落ちてくれないと効果はわかりませんし、落雷があってもサージ電流が発生するとは限りません。したがって、実際の作動状況は未確認ですが、スペック的に選べば、この製品が最適ということになると思います。
この製品をさらに買い増して、冷蔵庫やエアコン、テレビなどの雷サージ対策もしようと思っています。