賞味期限切れのミネラルウォーターは飲んで大丈夫? ペットボトルの水に消費期限がある理由

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なぜ水に賞味期限があるのでしょう

ミネラルウォーターのボトルは、キャップの横に賞味期限が小さく印字してあります。この賞味期限(消費期限)を過ぎたミネラルウォーターを飲んでも大丈夫でしょうか?

水は時間が経っても変質しない

期限(賞味期限・消費期限)を過ぎたペットボトルの水は、未開封でも飲めなくなるのでしょうか?

理屈のうえでは、そんなことはありません。

水、つまりH2Oは、時間が経っても劣化しません。そもそも水は、何億年ものあいだ地表や大気中を循環しながら安定的に存在してきたのです。水それ自体は永久不変です。

しかし、それにもかかわらずミネラルウォーターには消費期限が定められています。 コンビニで買うものだと2年。 災害備蓄用の特殊な保存水でも15年です。 この2年や15年は、何を意味しているのでしょうか。

賞味期限・消費期限の意味

ミネラルウォーターの消費期限は、実は、「水の消費期限」ではなく、「ペットボトル容器の性能の限界」を意味しています。

ペットボトルの「ペット」(PET)とは、ポリエチレンテレフタラートの略称です。ポリエチレンテレフタラートには「わずかな気体透過性」があります。
ペットボトルは液体は通しませんが、気体はごくわずか通します。この性質のせいで、2つの問題が生じます。

  1. 水がペットボトルの素材を透して蒸発するので、徐々に中身の量が減っていく
  2. 外部の臭いがペットボトルの素材をとおして水に移る

この2つの現象が人間の目や鼻に感じとれるようになる時期が、すなわちペットボトルの水の賞味期限(消費期限)というわけです。

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以下、さらに詳しく御説明していきます。

経年による水の目減り

水は蒸発すれば気体になります。たとえばコップの水は時間がたてば蒸発し、コップはカラになります。

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ペットボトルは密封されていますが、素材そのものがわずかに水蒸気を透過するので、中の水はゆっくり蒸発して減っていきます。

実際に見ていただくのがわかりやすいと思います。下の写真は、3本とも未開封のミネラルウォーターです(非常用に長期保存していたものです)。
左端の1本は消費期限内。他の2本は消費期限を過ぎています。

撮影日は2016年11月28日です。消費期限は左から順に以下のとおりです。

  • 2018年9月(消費期限内)
  • 2015年3月(期限を約1年8ヶ月超過)
  • 2013年3月(期限を約3年8ヶ月超過)

消費期限を過ぎたボトルは、中身の水が蒸発して減ったせいで、内側にへこんでいます。消費期限を3年以上経過した右端のボトルは、つぶれて、よじれています。水が減って内部の圧力が低くなり、大気圧でつぶれたのです。

目減りしたペットボトル飲料を販売すると法律違反

蒸発して中身が目減りすると、つぶれて見た目が悪くなるだけでなく、法律上の問題も生じます。

日本には「計量法」という法律があります。商品の計量の基準を定める法律です。この法律に、飲料はボトルに明記してある容量との誤差が1%以内でなければならないと規定されています。

500mlの1%は5ml、2リットルの1%は20mlです。

さきほどの写真の中央のボトルは、消費期限を1年8ヶ月過ぎており、ボトルの肩の部分がかなりへこんでいます。

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へこみの大きさからして、20mlを超える目減が生じています。この状態で消費者に販売すると、許容される1%(20ml)を超える誤差があるので、「計量法」違反です。

他のメーカーのミネラルウォーターも同じです。下の写真はわたしの家で保存していた「いろはす」の1.5リットルのペットボトルです。未開封です。消費期限は2016年3月なので、すでに8か月過ぎています。

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水が蒸発して目減りした分、ボトルの一部がペコンと凹んでいます。「いろはす」のボトルは素材が薄いので、とくに減りが早いようです。

水量が1%以上減ったペットボトルを店に並べて販売することは法律上できません。メーカー側は、こういう状態のミネラルウォーターが販売されないように、賞味期限・消費期限を設定しているのです。

外部からの臭いうつり

ペットボトルの素材は気体をわずかに通すので、周囲に臭いの強いものが置いてあると中身に臭いが移ります。

水はほぼ無臭ですから、少しでも臭いがつけば、かなりの違和感を感じます。臭いも味のうちなので、異臭のついた水は美味しくないです。

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外部の臭いが水に移ってしまう時間が、ペットボトルの水の「賞味期限(消費期限)」ということになります。

ただ、この点に関しては、保存状態しだいです。周囲に臭いの強いものがなければ、臭い移りの問題は生じません。

さきほどの写真の一番右の消費期限を4年近く経過した水も、ボトルが変形しただけで、異味・異臭はなく、おいしく飲めました。

消費期限切れの水を飲んでも大丈夫?

一般論としては、ペットボトルのミネラルウォーターは、賞味期限(消費期限)を過ぎていても、飲んで大丈夫です。

食品が腐るとか、悪くなるとかいうのは、雑菌が繁殖したり、素材が変質したりすることを言います。

ペットボトルの水は加熱や濾過によって雑菌などを取り除いてあります。未開封で雑菌がない水は、何年たっても腐りません。

また、水が自然に変化して違う物質になってしまうこともありません。水は永久に水のままです。あなたの家にあるペットボトルの水は、たぶん1億年後も今と同じ水です。水そのものに賞味期限や消費期限はありません。

ただし、製品によっては、微量の不純物が含まれるものもあり、その不純物が変質する可能性はあります。試しに口に含んでみて、異臭があったり不自然な味がするものは、不純物が変質している状態なので、吐き出して捨ててください。

その場合の犯人は、水ではなく、水に含まれる不純物です。不純物をどこまで取り除くか、これは生産コストと販売価格の兼ね合いによって決まります。非常備蓄用の長期保存水は、生産コストを余分にかけて不純物を厳密に取り除き、それによって消費期限を長くしていますが、そのかわり販売価格は高くなる、というわけです。

非常用ミネラルウォーターは長期保存可能

災害対策用品として販売されている消費期限(賞味期限)の長いミネラルウォーターは、ペットボトルの素材を厚くしたり、表面に特殊なコーティングを施したりして、気体透過性を低くしたボトルを使ってます。

これは、炭酸飲料のペットボトルと比較するとわかりやすいです。

普通にコンビニで売っているミネラルウォーターペットボトルはペラペラの薄い素材ですが、炭酸飲料のコーラのペットボトルは、触ってみると硬くて厚いです。

炭酸飲料のペットボトルは、炭酸が抜けてしまうのを防止するために、厚い素材や特殊なコーティングを使っています。これによって炭酸(二酸化炭素)の透過を防ぎ、気が抜けないように作ってあるのです。

普通の水の場合でも、コーラのペットボトルのような気体を透過しにくい素材を使えば、長期にわたって備蓄できる保存期間の長いミネラルウォーターになります。

たとえば、サントリーの人気商品「天然水」も、コンビニで売っているものは消費期限が短いですが、長期保存用の丈夫なボトルに入れると5年間の長期保存が可能になります。

さらに徹底的に不純物を除き、頑丈な容器に充填すれば、15年間保存できるミネラルウォーターもつくれます。

長期保存可能な非常災害備蓄用のミネラルウォーターは、保存性の高いペットボトルを使うことによって、賞味期限(消費期限)を長くしているのです。

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